福祉の“壁”をなくす──居場所づくりから始まる僕の挑戦

身近な体験から見えた、“支援が循環する社会”への思い
幼い頃から、家族の中に「支援を必要とする存在」が当たり前にあった水田翔一朗さん。
姉の姿や身近な出来事を通じて、福祉に触れることは決して“特別なこと”ではなく、
日常の一部として自然に存在していました。
しかし社会には「福祉=どこか特別」「自分とは距離のある世界」というイメージが根強くあります。
だからこそ彼は、大学で学びながら「福祉の壁をなくす」ことをテーマに
居場所づくりや起業の道を模索しています。
支援される人だけでなく、支援する人も救われる社会。
その思いを胸に挑戦を続ける彼の歩みは、
まさに「支援が循環する社会」の可能性を私たちに示しています。

家族との時間から芽生えた“福祉に向き合う決意”
福祉に関心を持った原点はどんな体験ですか?
小学生の頃、姉が不登校になったことが大きなきっかけでした。
当時は精神的な問題や不登校について、周囲も僕自身もほとんど知識がなくて、
どうすればいいか分からなかったんです。母も初めての経験で戸惑い、
家の中がギスギスしてしまうこともありました。
僕にできることは何もなくて、「何かしたいのに、できない」
という無力感がすごく残っています。
その後、中学・高校と進むなかで少しずつ調べていくと、
不登校や精神疾患で苦しんでいる人が本当に多いと知りました。
そこから「同じような立場の人を支えたい」という気持ちが生まれたんです。
その経験が今の活動にどうつながっていますか?
最初は心理士や精神科医として支えたいと思っていました。
でも調べるうちに「病院や専門機関のサービスは整っているけれど、
その手前で相談できる場所が足りない」と気づいたんです。
だから僕がやりたいのは“誰でも気軽に相談できる居場所づくり”。
病院に行く前の段階で安心できる場があれば、救われる人はもっと多いと思います。

支援は特別なことではなく“人としての当たり前”
「誰かを支える」ことを、あなた自身はどう捉えていますか?
僕にとって支援は「特別なこと」ではなく、当たり前のことだと思っています。
困っている人を見て「助けたい」と思うのは、人間として自然な感情ですよね。
なのに社会では「福祉」という言葉に壁を感じる人が多い。
どこか“自分とは違う人のためのもの”と捉えられてしまう。
だからこそ、僕はその壁を取り払いたいんです。「支援=日常」っていう感覚を広げたい。
活動を通じて「支援の意味」を実感した瞬間は?
起業のプログラムに参加して、同じ志を持った仲間と話した時に、
「自分の思いは社会につながるんだ」と実感しました。
僕一人では小さな思いでも、仲間がいることで形になる。
支援は自分だけのためじゃなくて、周りの人との循環で広がっていくものだと思います。

支えられてきたからこそ気づいた、“支援は循環するもの”
あなた自身が「支えられた」と強く感じた出来事はありますか?
高校の頃、一人で悩んでいたときに、声をかけてくれる友人がいました。
「翔一朗、大丈夫?」ってたった一言。でもその一言で「自分は一人じゃない」と思えました。
あの瞬間、僕は救われたんです。
その経験が「支援の循環」という考え方にどうつながったのでしょう?
支援は一方通行じゃなくて、ぐるっと循環するんですよね。
僕は友人の言葉に救われたから、今度は誰かに同じように声をかけたいと思う。
そうやって「支えられた経験」が、次の「支える行動」につながっていく。
それが僕の考える支援の本質です。

挑戦したいのに動けない──積極性のなさがくれた学び
これまでに直面した「自分の壁」は何でしたか?
僕はすごく心配性で、新しいことに飛び込むのが苦手なんです。
「もし失敗したらどうしよう」「場に馴染めなかったらどうしよう」って、いつも考えてしまって。
でも、それが挑戦をためらう理由になっていました。
そこからどんな気づきや成長を得ましたか?
挑戦する場に一歩踏み込んでみると、「思っていたより大丈夫だった」と気づくことが多かったです。
結果的に多くの仲間や大人と出会えて、自分の世界が広がりました。
だから今は「怖さは消えなくても、まず動いてみる」ことを意識しています。

仲間と出会い、自分の想いが社会につながると感じた瞬間
挑戦する中で「やってよかった」と感じた経験は?
起業プログラムで、同じ年代の仲間や先輩たちと出会えたことです。
彼らは僕と同じように強い想いを持って動いていて、
「自分もやっていいんだ」って勇気をもらいました。
その出会いや経験は、今の自分にどう影響していますか?
一人で考えていた時は「自分の考えなんて小さい」と思っていたけど、
仲間と話すことで「その小さな想いが社会を動かす第一歩になる」と信じられるようになりました。
出会いが僕の自己肯定感を大きく支えてくれています。
“福祉=壁があるもの”を変える。フラットにつながる未来へ
福祉のイメージについて、どんな課題を感じていますか?
多くの人にとって「福祉」と聞くと、特別な施設やサービスを思い浮かべると思います。
でも実際は「ちょっと言葉にするのが苦手な人」「気持ちを表すのが難しい人」など、
ほんの少しの違いでしかない。
それなのに「自分とは違う世界」と線を引かれてしまう。
これが一番大きな壁だと思います。
僕自身も昔は「福祉=どこか遠いもの」と考えていました。
でも姉や、障害者施設で出会った人たちと関わる中で「同じ人間としての共通点」の方が
圧倒的に多いと気づいたんです。
表現の仕方が違うだけで、笑うタイミングも、悩む理由も、僕らと何も変わらない。
そう知った時、「壁を作っていたのは自分自身かもしれない」と反省しました。

これから描く未来や、Aqua Cycleへの期待を聞かせてください。
僕が目指したいのは、福祉を“特別”ではなく“日常”にする社会です。
例えば「今日はちょっとしんどい」と気軽に言えて、
「じゃあ一緒にご飯行こうか」って自然に返せる関係。
病院に行く前の段階で声を掛け合える社会です。
そのために、僕は「居場所づくり」に挑戦したい。
相談できる場、安心して過ごせる場が広がれば、
心の不調を抱える人はもっと早く救われるはず。
さらに、支援する側の人も疲弊せずに済むと思います。
Aqua Cycleに期待しているのは、同じ思いを持つ人たちがつながる“交差点”のような役割です。
僕自身、新しい関係を築くのは得意じゃないけれど、
このコミュニティなら自然に支え合える仲間と出会える気がする。
支援する人が孤独にならず、「支援している自分を好きになれる」場になることを願っています。
まとめ