福祉の現場で出会った“与える”ことと“自分を好きになる”こと。


「自分が誰かを支えている。そう思えたとき、自分のことを少し好きになれる。」


そう話すのは、福祉や支援の現場で日々人と向き合っている須山さん。


地元・岡山で直面した少子高齢化という社会課題を入口に、福祉というフィールドに自然と関わり

を持つようになった彼が、支援という行為の中で見つけたのは、


“他者のため”と“自分のため”が、想像以上に密接につながっているという事実だった。


「福祉って、特別な人がやるんじゃない。誰だって、できるんですよ。」


そう優しく語る須山さんに、支援の現場で得た気づきと、これから目指していきたい未来について
聞いた。



福祉に関わるようになったきっかけ

今の福祉や支援の仕事に関わるようになったきっかけを教えてください。


きっかけはすごくシンプルなんですよね。地元が岡山なんですけど、年々人口が減っていくのを

目の当たりにして、「このままで大丈夫なんかな?」って不安になったんです。



ニュースでも少子高齢化ってずっと言われてるけど、それが身近な問題として自分の中に
入ってきた瞬間がありました。



それで「福祉って必要だよな」と思ったんですよね。最初は介護のイメージしかなかったんです。



でも調べたり話を聞いたりしていくうちに、福祉ってもっと広いし、

いろんな人に必要とされている分野だって気づきました。


障害を持っていたり、生きづらさを感じている人がいる。


そんな人たちを支えられるような、仕組みや居場所を作りたいと思うようになったんです。


もともと、人を支えることに関心があったんでしょうか?

うーん、もともと「困ってる人は放っておけない」みたいな感覚はあったかもしれないですね。



自分が関わることで、誰かがちょっとでも楽になったり、前向きになったりしたら嬉しいっていう。



だから、福祉って仕事を知ったときに、「これ、自分に合ってるんじゃないかな」

って思えたんだと思います。



支援することと、自分が好きになることの関係

福祉の現場に入ってから、ご自身の考え方や気づきに変化はありましたか?


めちゃくちゃありましたね(笑)。


最初は「自分が助ける側」という意識がどこかにあったんですけど、

実際に現場に出ると「誰が支える、誰が支えられる」ってすごく曖昧なんだなって思いました。



障害って一言で言ってもいろいろあるし、身体的なものも精神的なものもあるし、

すごく身近にあるんだなって。だから、最初は「どこか遠い世界」だと思ってたものが、

実はすぐそばにあるんだと気づきました。



支援って、「してあげる」「される」じゃなくて、お互いの中に自然にあるものなんですよね。


その気づきは、須山さん自身にどんな変化を与えましたか?


「自分、このままでいいんだな」って思えるようになったことが一番大きいですね。


僕、もともと大きな目標を掲げて頑張るタイプだったんですよ。


でも支援って、目の前の相手がちょっと笑顔になったとか、

そんな小さなことで十分意味があるんだって気づいてから、すごく楽になったんです。



相手にとってはほんの些細な変化でも、そこに自分が関われたことが、すごく嬉しい。

そういう経験を重ねるうちに、自分も少しずつ好きになれていった気がします。



支援とは、与えること以上に「循環」だった

「与える」という行為をどう捉えていますか?


与えるって、すごく自然なことだと思ってます。


支援って特別なスキルが必要とか、ハードルが高いとか思われがちですけど、

実は日常の中にたくさんあるんですよね。



例えば誰かに優しい言葉をかけるとか、困ってる人にちょっと手を貸すとか、
そういうこと全部が支援だと思うんです。



だから僕は「福祉って特別な人がやるものじゃない」と思っています。

誰でもできるし、みんなもうすでにやっているんじゃないかなって。



与えることで、巡り巡って自分にも返ってくるんですよ。

 

実際に与える側に立って感じた変化はありましたか?


すごくあります。相手のちょっとした変化に気づけるようになるんですよ。


「あ、少し元気になってるな」とか、「最近笑顔が増えたな」とか。

そういう変化を感じられると、自分自身もすごく満たされるんです。



支援することで、自分の存在価値を確認できるというか。

「このままでいいんだ」「自分にもできることがあるんだ」って思える。



それが、結局自分を好きになることに繋がっている気がします。



挫折と向き合い、「小さな一歩」の積み重ね

これまでに、うまくいかなかったり、悩んだ経験はありますか?


何度もありますね。特に最初の頃は、「自分には向いてないんじゃないか?」

って思うことも多かったです。


やっぱり人と向き合う仕事なので、うまくいかないこともたくさんあるんですよ。



相手が変わらない、伝わらない。それに対してすごく悩んでました。

でも、そこで思ったんです。

「相手を変えようとする前に、自分が変わらないと」って。



僕、中学・高校とずっと部活で副キャプテンやってたんですけど、

そこでも同じような経験があって。


チームをまとめるために一人ひとりと向き合って、何度も何度も話して、

伝わらないことに悩みながらも諦めずにやってきた。



その経験が、今にも活きてるなって思います。



一気に何かを変えようとしない。小さな一歩でもいいから、前に進み続ける。


それがすごく大事なんですよね。


支援者自身が「自分を好きでいられる場」を作りたい

須山さんが今後、目指していることを教えてください。


今、自分が関わっている「アクアサイクル」っていうコミュニティを、

もっと「自分を好きでいられる場所」にしていきたいと思っています。



支援って、相手のためにすることではあるけど、

支援している側が「自分は今、ちゃんと意味のあることをしている」

って実感できる場じゃないと続かないと思うんです。



誰かを助けながら、自分も元気になれる。そんな場所にしていきたいですね。



働き方や生き方を見直すきっかけになったり、自分の気持ちを整理できたり。


そういう場が、福祉の現場にはもっと必要なんじゃないかなって思っています。




「自分らしく生きていい」というメッセージ

最後に、支援に関心がある方、携わろうとしている方にメッセージをお願いします。


支援って、別に特別な行為じゃないんです。誰でもできるし、

すでに日常の中でやってることなんですよね。



でも、意識してみると、自分がどれだけ誰かを助けてきたかに気づくことができる。



それがわかると、「自分も結構いいじゃん」って思えるんですよ。

だからまずは、自分のいいところに気づいてほしいなって思います。



支援って、相手のためだけじゃなくて、自分のためにもなる行為です。


誰かに優しくしたり、ちょっと手を貸したり、そういうことを通じて、

自分自身も元気になっていく。


その循環を、一緒に作っていきたいですね。


まとめ

誰かを支えることは、自分を認めることに繋がっている。


支援という営みの中で、須山さんは小さな変化を積み重ねながら、


自分を好きになるという答えを見つけた。


今日もまた、彼は静かに、でも確かに、その優しい循環を広げている。